高級茶葉の産地として知られる、福岡県八女市。お茶の産地というと静岡県が有名ですが、近年は九州の茶栽培が勢いをつけています。とはいえ、農林水産省 「茶統計年報」、「工芸作物統計」及び「作物統計」(2019年)によれば、福岡県の茶葉栽培量は全国6位。八女茶の栽培量は決して多くはありません。
それでもお茶好きの間で八女茶の人気が高いのは、その品質の良さに理由があります。緑茶の中でも最上級とされる玉露の産地として、全国茶品評会で20年連続産地賞を受賞するほどの実力を持っているのです。
茶の名産地・八女市で、昭和元年から茶作りに励むのが「鶴製茶園」。茶葉の栽培から加工、販売まで全てを自社で一貫して行っています。現在、茶園を切り盛りするのは、四代目の鶴健太朗さん。日本茶インストラクターの資格を持つほか、福岡県内のお茶屋さんらで構成する「福岡県茶業青年団」に所属し、八女茶の普及に力を入れています。そんな鶴さんが、八女市で上質なお茶が栽培される理由を教えてくれました。
「上質なお茶を栽培するため、欠かせないのが寒暖差です。寒さによる程よいストレスを茶に与えながら、じわじわと新芽を伸ばすことで甘味がある葉に育ちます。八女市は日中の気温が高く、夜は冷え込む茶栽培にぴったりの気候。さらに程よい降雨量に加えて、霧が発生しやすい場所です。霧が日の光を遮り、湿気をもたらすことで、さらに甘味やうま味が増した茶が育つんです」
実は、日本茶はコーヒーや紅茶と同じく多くの品種があり、それぞれに違った香りが楽しめます。「今後は、品種にこだわってお茶を栽培し、紅茶のようなフレーバーティーを日本茶で作ってみたいと考えています。お茶の香りだけで、こんなに違いが楽しめるのかというのを知ってもらいたい。そうすれば、若い人が日本茶に興味を持ってくれて、馴染みあるものになり、いろんな楽しみ方が増えるんじゃないかって思うんです」。知れば知るほど奥深い日本茶の世界。まずはその入門編として、鶴製茶園のお茶を楽しんでみてはいかがでしょう。