西脇市の地場産業として220年以上の歴史を誇る「播州織」の最大の特徴は、染め上がった糸で柄を織る「先染織物」という手法を用いることです。先染織物は後染織物やプリント生地とは違い、使えば使うほど深みのある色合いになります。経糸と緯糸が織りなすデザインは無限大で、最近では若手デザイナーによる生地も高く評価されています。しかし播州織はシャツやハンカチ、ストールなどを作るために用いられることが多く、ほとんどが薄手のものです。既存の生地はバッグを作るには強度的に不十分で製作は難しいと感じました。”芯材”を用いれば薄手の生地でバッグを作ることは可能ですが、「できる限り人工素材は使わないモノづくり」を大切にしているため、「オリジナル生地」を作ろうと思いました。
「西脇市に貢献したい」「地元の職人さん方に織ってもらい」という強い想いから、オリジナル生地作成に協力してくれる地元企業を市役所にお願いして探したところ、昭和9年設立の地元企業「泰久商店」さんが協力したいと手を挙げてくださいました。PAGOTの想いに共感してもらい、”いち仕事人”として対応してもらえたのがとても嬉しかったです。生地に関しては、バッグを作るために必要な厚みとハリを限界値まで上げてもらい、播州織の中で最も分厚い生地作りといっても過言ではなく、お互いに「チャレンジ」でしたが、最終的にはとても納得のいく生地を作ることができました!
地域の若い方の播州織を広めていきたいという想いに共感し、少しでも役に立てればと思い、今回の仕事を引き受けました。
また、個人的には”厚手の生地を織る”ということに興味がありました。太番手(糸の太さを表す単位)の糸で生地を織るには、それなりの技術や経験が必要です。例えば、縦糸に糊を付ける作業(サイジング)の際に、糊が多すぎると打ち込みが出来なくなったり、逆に少なすぎると糸が切れたりします。製織は厚手の生地を織るのにも慣れている幸成織布さんにお願いし、織機に打ち込める限界の厚さの生地に仕上がったと思います。
2017年、「PAGOT」を5種類のバッグからスタートさせました。PAGOTのバッグは自分が思う可愛いを形にしたモノたちです。「手でちょこっと持つシルエットが好きだから」という理由で当初はハンドバッグのみでした。バッグには様々な作り方があり、正解はありません。自分が培ってきた経験と今持つ技術を使い、ベストを尽くし製作しています。高級な革を使えば素敵なバッグになるかと言うと、そうではないと考えています。素材×クオリティー×デザイン×価格 のトータルバランスを大切にしながら一型一型作っています。私は革の自然な表情に惚れ、昔からの製法で作られた革を選んでいます。そのため同じデザインでもひとつひとつ個性があり表情が異なります。世界に一つだけのアイテムとしてそばに置いていただけると嬉しいです。まだまだ職人として未熟ですが、今日できること、納得できる取り組みをしていきます。座右の銘の「毎日が全盛期」を胸に現在まで進んできました。これからも自分のできること、やりたいことを丁寧に向き合っていきます。