「海の京都」とも称される、京都府最北端のまち、京丹後市。日本海に面したこの地域では、幻のカニと呼ばれる間人蟹(たいざがに)や脂が乗ったブリの産地として漁業が盛んに行われています。また京野菜や丹後産コシヒカリの産地として、京の都の食文化を支える農産地としての役割も担っています。
約40年前、漁業や野菜の農業が盛んな京丹後市網野町で、新たに肉牛の農業経営に乗り出した牧場がありました。その名は、日本海牧場。名前のとおり、広い放牧場を登った先には日本海の青い景色が広がり、漁港を中心とした海の営みまで眺めることができます。
今回ご紹介する返礼品は、この風光明媚な土地で育まれた「京たんくろ和牛」のすき焼き・しゃぶしゃぶセットです。赤身牛の特徴を持つ短角牛を母に、脂身のサシがうまい黒毛和牛を父として交配された牛肉は、2つの牛の頭文字を取って「京たんくろ和牛」と名付けられ、お肉の濃いうま味と口溶けの良さを堪能できます。
「京たんくろ和牛」が支持されている理由は、肉牛の品種のみにあらず。餌や環境にこだわり、日本海に面した京都北部の自然豊かな土地で、地域とのつながりを大切に育まれているからなのです。
日本海牧場を始めたのは、建設業を営む企業でした。「地域でまだ見出されていない資源を生かす」を理念に掲げ、本業で培った土木技術を生かして、約6haの広大な山林を放牧場として整備したのです。
こうして出来上がった野芝が広がる空間では、おもに母牛の放牧が行われています。シンボルとなる大きな樹々の木陰では母牛たちが休み、急な斜面には、牛たちが繰り返し往復して作った段々畑のような獣道が築かれています。日本海から吹き抜ける心地よい潮風に包まれながら、母牛たちは妊娠期間を快適に過ごします。
牧場では年間を通じて、京たんくろ牛をはじめ約200頭の和牛を肥育しています。京丹後の地域では、昔から酪農や農業のための牛の飼育が行われていました。しかし肉牛の産地としての歴史は浅く、新たな取り組みに乗り出した先代の社長が各産地を巡り、京丹後に環境に合った牧場の在り方を模索したのだと言います。
視察した先で出会ったのが岩手県の牧場でした。「海に面していて、冬場は雪が積もるなど岩手と丹後の気候は良く似ている。岩手で根付いているならば、厳しい丹後の気候でも強く生きられるはずだ」。こうして選ばれたのが、短角牛の品種だったという訳です。
和牛との交雑種を育てる仕事は、まず短角牛を仕入れるところから始まります。仕入先はやはり短角牛の有数の産地である岩手県。市場で競り落とした5〜10頭の雌牛をはるばる岩手まで引き取りに行きます。
日本海牧場にやってきた雌牛は、黒毛和牛の雄牛と交配され、母牛となります。牛の妊娠期間は人間と同じ約10ヶ月。妊娠期間を放牧場で過ごした後に牛舎で出産し、生まれた子牛は出荷用の肥育牛として育てられます。出荷までの期間は妊娠中から数えて約30ヶ月。3年弱の時間を過ごした肉牛が出荷され「京たんくろ和牛」のブランドで流通しているのです。
「肉の味が濃い」。日本海牧場から出荷されたお肉を食べたお客様からは、決まってこんな感想が寄せられます。肉の味の濃さを生み出す秘訣は、餌にありました。日本海牧場の牛たちに与えられる餌は、そのまま人間の食べ物にしても支障ないようなものばかり。粒ぞろいのコシヒカリは粉砕して、餌に加えています。
さらに、保管庫の袋を開けると食欲が進むような芳ばしい香りが漂ってきました。香りの元は、醤油を搾った後に残る醤油粕。ふりかけのように美味しそうな醤油粕も牛たちの餌として与えられています。お肉の甘みは、お米から。お肉の味の濃さは、醤油粕から生み出されていたというワケです。
大規模経営ではない日本海牧場のお肉は、元々は一部の飲食店限定で取引されており、一般のお客様にとってはあまり馴染みがありませんでした。しかし、近年のコロナ禍が転機となり、自宅でも良いお肉を食べたいといった需要に応えるべく、一般のお客様からも注文いただける仕組みを整えました。
そして、ご自宅でも日本海牧場のお肉を食べていただける手段の一つが、このふるさと納税の返礼品。しゃぶしゃぶ・すき焼きセットは2〜3人前のロース肉が届きます。急速冷凍されたお肉は冷凍便で届くため、ご自宅の冷蔵庫で約1日かけてゆっくり解凍の上、しゃぶしゃぶ、すき焼き、その他お好みの調理でお召し上がりください。そして、お肉本来のうま味、濃さをご堪能いただけたら幸いです。
「私たちも購入して、自宅で食べてますよ」と教えてくださったのは、スタッフの前田さん。さまざまなお肉と食べ比べ、「京たんくろ牛」の旨みや味の濃さを実感しているそう。スタッフ自ら肉の味に惚れ込み、リピーター顧客として購入しているというのだから、人に薦めたい気持ちもひとしおです。
しかし、人数の限られたスタッフで200頭の牛のお世話をするのは、容易なことではありませんが、やはり喜びは「お客様が美味しいといって満足して下さること。また食べたいとリピートして下さること」に尽きると前田さんはいいます。そんな想いで、真夏日も、深々と雪が降り積もる冬も、この京丹後の地で丹精込めて育てられたお肉を、是非この機会にご堪能ください。
京都府最北端のまち・京丹後市出身、在住。森と林業について学び、京阪神エリアではたらいた後、10年振りにふるさとへUターン。現在は有機農家として稲作、お米をつかったお菓子を販売する傍ら、ライターや編集者として京丹後の暮らしについて発信しています。
日本海に面した半島として独自の文化を有する京丹後市は「何度も通いたくなる場所」としてリピーターを集めている地域です。