私たち栄醤油醸造が醤油づくりを始めたのは寛政七年(1975年)のことでした。それから二百年以上経ち、工場による大量生産が可能になった今でも、そのつくり方は江戸時代のころと大きな違いはありません。醤油蔵に並ぶ高さ二メートルほどの木桶に原料を仕込み、一年半かけて発酵させます。熱を加えれば時間は縮まりますが、あえてそれはしません。あくまでも自然のペースでの熟成を促します。栄醤油醸造の醤油づくりは人と自然との共同作業なのです。
醤油の原料である大豆と小麦。しかし日本では、ほとんどを輸入に頼っているのが現状です。特に大豆に関しては、流通している醤油の八割が脱脂加工大豆といってあらかじめ油分が除かれたものを使用しています。
一方「栄醤油 天」に使用しているのは自然農法により栽培された国産の丸大豆と小麦。それも、信頼のおける農家さんに育てられたものだけを集めました。農薬や肥料の代わりに愛情をたっぷりと受け、ひと粒ひと粒に大地の力が詰まっています。
醤油づくりにおいて欠かせないのが”菌”の存在です。彼らの働きによって、醤油の味、色、香りが生み出されます。そのため、効率よく醤油を生産するために彼らを純粋培養する方法もあります。特に麹菌に関しては、麹屋さんから仕入れてくるのが一般的なやり方です。しかし「栄醤油 天」では、あえて自家採取したものを使用。醸造にかかわるすべての菌が、蔵や木桶に棲みついた天然のものであることにこだわりました。
このように、「栄醤油 天」は原料も、菌も、発行する環境に至るまで、自然の恩恵を最大限に活かしてできた醤油です。しかし、自然の力だけではこの醤油は出来上がりません。自然農法を広めるひと、作物を育てる農家さん、それを受け取り醸造する私たち。そして、それを家庭の味にしてくださるお客様。
みんながそろってはじめて、「栄醤油 天」という醤油は完成します。