■越前仕立て汐うに
江戸時代、越前仕立て汐うには、浜の年貢として福井藩に納められ、軍事用の備蓄食として、また、将軍家・宮家・他藩大名への贈物として用いられておりました。
各地より将軍家や宮家へ贈られる品々の中でも「長崎のからすみ」「尾張のこのわた」「越前の汐うに」は、美味である上、いずれも大量製造ができず入手が困難であったことから日本三大珍味と称されております。
汐うにの創製は古く、江戸時代後期。時の福井藩主の松平治好公から「日持ちのするウニの貯蔵品を作るように」と命じられた天たつ三代目当主・天野五兵衛が、塩蔵法による越前仕立て汐うにを考案、その製法を越前海岸一帯に広めました。
天たつの越前仕立て汐うには、日本海沿岸でとれた国産バフンウニの卵巣のみを使用し、塩を振り、水分を落とし熟成して仕上げます。余分なものは一切加えず、100gの製品を仕上げるのに100個以上のバフンウニの卵巣を使用しており、ねっとりと濃厚な味わいです。
「上あごの裏に小豆粒くらいの量の汐うにをつけてお酒を一合飲む」という逸話も残っております。
小指の先ほどの汐うにを少量ずつお召し上がりください。まろやかな熟成と深い磯の香り、ねっとりと濃厚な雲丹の余韻をお楽しみ頂けます。炊き立てのご飯にもおすすめ。ご飯に汐うにをのせ、焼きのりで巻いて頂くとまた格別です。
■粉うに
粉うには、越前仕立て汐うにを乾燥して旨味を凝縮し粉状にした、磯の香り濃い雲丹のふりかけです。バフンウニと塩だけで作り、100gの粉うにを作るのに200から300個のバフンウニを必要とします。
もともと粉うには江戸時代から存在しておりました。
当時、浜の年貢である汐うにを福井藩から江戸まで運ぶのには幾日もかかり、汐うにの端のほうは乾燥してかたくなります。その乾燥した汐うにをオロシガネなどで粉状にして魚のお刺身にかけていたのが粉うにと言われております。
粉うには、炊きたてのご飯にふりかけてお召し上がりください。湯気で少しずつ乾燥状態から戻り、次第に磯の香りが広がります。
また、パスタや生の魚のお刺身にかけても美味しく、バタートーストにふりかけても、ワインなどに合わせて頂くのもおすすめです。
■干うに
浜の贅沢品として、明治、大正時代のころから福井の浜で作られていた珍味です。
当時は、海水を沸かして、バフンウニの殻ごと茹で上げ、中のウニを取り出し天日で干して仕上げていました。現在は直径3cm程しかないバフンウニを手作業にて貝を割り、小指の先ほどしか取れないウニの卵巣を、多くの時間と手間をかけて干しあげます。
しかも干すことで一段と小さくなる干うに。その味は甘味濃く、磯の旨味が凝縮された一品。昭和の戦争に向かう時代に贅沢品が規制されていく中で、この干うにも製造の禁止の命を受け、以来、作られることはありませんでしたが、2012年、天たつに口伝で伝えられていた製法を、現代の方の口に合うよう改良し、復刻した浜の贅沢珍味です。
そのまま一粒ずつお召し上がりください。冷酒の肴、ワインのおつまみに。チーズとの相性が良く、クリームチーズの上に干うにを一粒のせていただき、冷えた白ワインと一緒にお召し上がり頂くと格段の美味しさです。