日本のシジミはマシジミ,セタシジミ,ヤマトシジミの3種類が存在し,最も多く漁獲されていたのはヤマトシジミです。
ヤマトシジミは唯一,淡水と海水が混じる汽水域に生息し,茨城県では利根川や涸沼を中心に漁獲されていました。
利根川はかつて全国生産量の7割近くを占め,日本一の産地であったこともありますが,河口堰・水門による汽水域の減少や河川改修による水草帯の減少,生活排水の増加による水質の悪化などの様々な要因により,1970年頃をピークに減少傾向となり,2000年頃には利根川のヤマトシジミは,ほぼ漁獲されなくなりました。
利根川のヤマトシジミを復活させるため,地元の漁師さん自らヤマトシジミ種苗をつくり育てる取り組みが2000年初頭から始まりました。
県・市も漁師さんの取り組みに賛同し,ヤマトシジミの種苗生産試験を開始しました。陸上の大型の水槽で,親貝の産卵から稚貝が成長するまで育て,利根川に放流する試みを始めました。稚貝の放流量は数千万個単位になります。
稚貝を育て放流を続ければ,数年でシジミが復活するものと漁師さんは考えていました。しかし,試験操業を行っても漁獲につながるような成果を得ることは出来ません。放流する場所や時期を変えたり,網に入れて保護するなど試みましたが結果が出ませんでした。
今の利根川ではシジミの復活は無理なのかあきらめそうになる中,鯉などの食害が大きな原因であることが分かりました。水質環境を把握し,食害防止対策の方法など試行錯誤を重ね,稚貝が成貝に成長するまで生産工程の確立に約20年の歳月を要しました。
シジミを保護しながら育てることで,黒くて大粒の成貝になります。
漁師さんは30mm以上の黒く光る大粒なヤマトシジミに”神栖の黒宝”と名前を付けました。
長年の悲願が叶った”神栖の黒宝”はとても素晴らしい大粒の逸品です。漁師さんの諦めない気持ちが実った愛情たっぷりの利根川産ヤマトシジミをぜひご賞味ください!